高い着物の理由?なぜ高い?見分け方について

着物を購入するとき、着物の価格設定がよく分からないと感じる方は多いのではないでしょうか。

実際に、着物は何百万円もするような高級なものから数万円で買える安いものまで、価格の幅が非常に大きい商品です。

単純に「値段の高い着物=良いもの」と考えられがちですが、一概にそうは言えません。

特に、バブル期には「着物は高い方がよく売れる」などと言って適正な価格よりも不当に高い価格設定をして着物を販売するような業者がありました。

適正でない価格で着物を買ってしまうことを避けるためにも、高い着物とリーズナブルな価格の着物の違いや見分け方を把握しておく必要があります。

そこでこの記事では、高い着物とリーズナブルな価格の着物の違いと、その見分け方のポイントをご紹介します。

着物を購入する、または買取に出す際には、着物の価格相場を知る上での参考にしてみてください。

生地の種類

着物の価格を大きく左右するポイントが、使われている生地の品質です。

着物の生地にはさまざまな素材の糸が使われており、素材によって価格が変わってきます。

また、使用している糸の本数によっても、着物の価格は変わります。

糸の密度が高く、使用されている糸の数が多い着物の方が価格は高くなりやすいです。

糸の密度が高い着物はずっしりとした重みがあります。

一方、使用されている糸が少ない着物は安価になる傾向があります。

以下では、着物に使われる主な生地の素材についてご紹介します。

絹は、高価な着物に多く用いられている素材です。

素材として絹を使うと、光沢があり、気品のある美しい生地ができます。

体になじみやすく動きやすいですが、湿気に弱く傷みやすいため扱いには注意が必要です。

正絹(しょうけん)という絹100%で作られた生地の着物が最も高級とされます。

木綿

木綿も着物の生地として多く用いられる素材です。

絹糸よりも木綿糸で仕立てられた着物のほうが価格が安くなる傾向があります。

肌触りが良く、通気性や吸水性や耐久性に優れています。

ただし、縮みやすくシワになりやすいので注意が必要です。

麻を使うと、柔らかくて着心地が良く、通気性が良い生地になります。

弾力性がないため、シワになりやすく色落ちしやすい素材でもあります。

麻の利点を生かしながら弱点をカバーする素材として、綿と麻を混ぜて織られた綿麻という生地があります。

木綿の良い肌触りと麻の優れた通気性を引き継ぎながら、強度が増してシワになりにくい生地になっています。

羊毛

羊毛は冬場に最適な暖かい生地です。

吸湿性が高いですが、耐久性が弱く、虫がつきやすいという欠点があります。

ポリエステル

ポリエステルは洋服に多く使われる素材です。

自宅で洗濯ができるなど、扱いやすさが特徴です。

一方で保温性と吸湿性に乏しく、着物の絵柄が映えにくいというデメリットがあります。

ウール

ウールは保温性があり、シワになりにくく水をはじく糸ですが、湿気を吸収する性質があります。

夏用のサマーウールという種類もあります。

職人のかける手間

着物は作る工程によっても、価格が変わります。

機械織りよりも手織り、機械で柄をプリントしたものよりも手作業で染めたもの、というように職人の手間がかかるものほど価格が高くなりやすいです。

また、2度染め・3度染め・4度染めと、染める回数が多くなるとその分手間もかかるため、価格は高くなる傾向があります。

ここでは本場大島紬・江戸小紋・京友禅・加賀友禅を例にとって、職人の手間のかけかたによって価格が変わる例をご紹介します。

本場大島紬

本場大島紬(つむぎ)は、奄美大島を発祥の地とする伝統工芸品の絹織物です。

先染めした絹糸を使って織り上げることで表現する絣(かすり)模様が特徴の本場大島紬は、新品で購入すれば最低でも数十万円が相場と言われ、高級紬の代表格とされています。

通常は経糸と緯糸の両方に絣糸を用いて模様を織り上げていきます(経緯絣)。

中には「緯総絣」と呼ばれる、絣糸を緯糸だけに用いる織り方もあります。

この緯総絣では経糸に柄がないため、職人は織るのが楽になります。

そのため柄の細かさが同じであっても、価格には10倍以上の違いが出るのです。

緯総絣であっても本場大島紬には違いありませんから、「本場大島紬は数万円で販売される」ことになります。

「数万円」という価格は本場大島紬の相場と比較するとずいぶん安いですが、緯総絣のものであればこれが適正価格です。

反対に、緯総絣の本場大島紬が経緯絣のものと同様の価格で販売されていたら、それは不当に高い価格ということになります。

同じ本場大島紬であっても手間のかかり方によって、新品の販売価格で10倍以上の差が出るのです。

江戸小紋

江戸小紋は型を用いて染められる着物の一種で、遠目で見ると色無地に見えるほど細かい模様が全体に入っていることが特徴です。

模様が非常に細かいため高い技術が必要で手間がかかり、価格も高くなります。

新品で購入すれば数十万円という価格になるものも多くあります。

しかし、最近では機械によるプリント技術が高まったことから、機械で模様をプリントした江戸小紋が作られるようになりました。

機械を使うことで職人の手間がぐっと減るため、機械プリントのものは手作業で染めた江戸小紋に比べて安い価格で販売されます。

江戸小紋は手染めと機械プリントでは、やはり微妙な風合いに違いが出てきます。

機械プリントの精度が上がっていることもあり、着物に馴染みがない人にとっては手染めと機械プリントとの間にそれほど差を感じないかもしれません。

価格には大きな違いがありますので、微妙な風合いにこだわらない人にとってはお買い得だと言えるでしょう。

ただし、機械プリントの江戸小紋を「手染め」と偽って販売するような悪質な業者も出てきていますので注意が必要です。

京友禅・加賀友禅

京都の伝統工芸品である京友禅や石川の伝統工芸品である加賀友禅はともに、絹織物の白布に絵を描いて染め出した着物です。

友禅は防染のために、図柄の輪郭線にあわせて糸目と呼ばれる細い糊を乗せていくのですが、細い口金の先から一定の太さで糊を出しながら図柄を描かなければならないこの「糸目を引く」の作業はたいへん手間がかかります。

京友禅・加賀友禅はその他の工程も職人の手作業によって行われるため、数百万円という価格になることも珍しくありません。

しかし、糸目を引く作業を機械で行う「型糸目」という技術が発達したことにより、最近では10万円以下という比較的安価な友禅が販売されています。

染め自体は職人が手作業で行うことに変わりないのですが、手間のかかる糸目引きに機械を用いることにより、職人の手間を大幅に減らすことができるため、価格を抑えることができるのです。

ただし、機械で糸目を引いた型糸目は正確に同じ模様を作り続けることができますが、職人の手作業で糸目を引いた場合には全く同じ模様は2つと出来ません。

これこそが手作業の味であり、型糸目には無い付加価値だと言えるでしょう。

高い着物の見分け方は?

高い着物とリーズナブルな価格の着物を見分ける方法は、染め方を確認することが挙げられます。

着物の袖裏を確認し、染料が染みわたっておらず、白っぽくなっているものは機械でプリントしたものである可能性が高いです。

特に振袖は機械プリントのものが多く、全体的にしっかりと柄が入っているものでも比較的安い価格で販売されていることが多くあります。

また、一般的に安い着物はペラペラとしていて薄くて軽く、高価な着物は糸の本数が多いためずっしりと重いと言われていますので、これも高い着物の見分け方の1つと言えるでしょう。

さらに、高い着物を見分けるための材料として証紙の有無があります。

証紙とは有名産地の着物や伝統工芸品の着物などの組合が発行する、「本物の証」となる紙のことです。

本場大島紬や京友禅・加賀友禅にもそれぞれ組合が発行した証紙が付けられています。

この証紙が付いていれば、その着物は組合が品質を認めているため、価格は高くなる傾向があります。

ただし、本場大島紬に経緯絣と緯総絣があったように、証紙が付いている伝統工芸品の中にも価格に差が出る可能性があることは把握しておきましょう。

また、国が指定する伝統工芸品には「伝統証紙」と呼ばれる金色の証紙が貼られており、高い着物を見分けるうえでの目安になります。

証紙を着物を買取に出すときにも買取価格を左右します。

お持ちの着物に証紙が付いている場合には、買取に出すときに備えて大切に保管しておきましょう。

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